うつ病
「インターネットでメンタルヘルスのチェックをしていったら、うつ病に当てはまったので受診しました。」という方が多く受診されます。当院ではそのなかの1割がうつ病で7割以上が急性ストレス障害と診断しているような割合です。
診断
1.抑うつ気分
2.興味または喜びの喪失
上記の症状のうち、1or2を満たさなくてはならない。
3.食欲の減退または増加、体重の減少または増加
4.不眠または睡眠過多
5.精神運動性の焦燥または制止
6.易疲労感または気力の減退
7.無価値観または過剰な罪責感
8.思考力や集中力の減退または決断困難
9.死についての反復思考、自殺念慮、自殺企図
上記の症状がほとんど1日中、毎日あり2週間以上続き、合計で5つ以上認められていて、その症状によって日常生活で支障を来していること。かつ、その症状の原因が身体疾患、薬物によるものでないこと。
2.の「興味または喜びの喪失」というのは好きだったゲームができない、漫画を読まなくなった、趣味だった旅行に興味がなくなった、子供が生まれたのに嬉しくない、プレゼントをもらったのに嬉しくないなどです。3.の「食欲の減退または増加」とありますが、私の経験上、ほぼ100%「食欲減退」です。同様に「体重の増加」はほぼ認められず、概ね「体重の減少」が認められます。4.の不眠も多く随伴しやすい症状です。睡眠過多はまれですね。5.の「精神運動性の焦燥」というのは落ち着かなくて、家の中を用もないのにウロウロするとかそういう感じです。「制止」というのは頭が働かずにボーっとしている感じです。私は9つの症状を「心的エネルギーの低下」と一言で表現していて、診察する際にはこの「心的エネルギーの低下」の有無をチェックしています。「俺は気分が沈んで、やる気もねーし、食欲もない、眠れないし、死にたくなるし、疲れやすいし、うつ病だと思うんです」訴えだけから診断基準に当てはめるとうつ病の診断になりますが、その人の【声の大きさ、表情、質問から返答にかかる時間】=【心的エネルギーの低下】をcheckしてうつ病かどうかを判断しています。
治療
うつ病の治療は休養と薬物療法の2本柱になります。仕事をしている場合は2~3カ月の療養休暇の診断書を作成して休養して頂き、症状改善しなかった際にまた1~2カ月療養休暇を延長して休養して頂きます。薬物療法としては抗うつ薬(三環系、四環系、SSRI、SNRI、NaSSA)のどれか1種類を十分な量、十分な期間使用する必要があります。1種類目の抗うつ薬に反応しない場合はその薬を漸減・中止していき、2種類目の抗うつ薬を漸増していきます。2~3種類の抗うつ薬を使用しても症状が改善しない場合は薬物抵抗性のうつ病と診断し、電気痙攣療法が必要となります。(余談になりますが、うつ病の診断に間違いがなければ電気痙攣療法はほぼ100%効果が認められます。うつ病ではなく社会要因などを理由に抑うつ症状が持続していただけなどの場合には、電気痙攣療法の効果が認められないことがあります。)またうつ病の際には不安、焦燥、不眠といった症状を伴うことが多いので、抗うつ薬の他にも抗不安薬と睡眠薬を同時に処方することが多いです。