認知症

簡潔に表現すると認知症とは一度、正常に発達した認知機能が後天的に低下していき、日常生活に支障が認められた状態のことです。認知症を来す病気は20種類以上ありますが、代表的なものはアルツハイマー型認知症で初期症状は物忘れから始まります。臨床症状、頭部画像検査(CT,MRI,SPECTなど)、認知機能検査から総合的に認知症のタイプを特定していきます。

認知症全般の診断

A.1つ以上の認知領域(注意、実行機能、学習および記憶、言語、知覚ー運動、社会的認知)において、以前の行為水準から有意な認知の低下があるという証拠が以下に基づいている。

(1)本人、本人をよく知る情報提供者、または臨床家による有意な認知機能の低下があったという懸念、および

(2)標準化された神経心理学的検査によって、それがなければ他の定量化された臨床的評価によって記録された、実質的な認知行為の障害

B.毎日の活動において、認知欠損が自立を阻害する(請求書を支払う、内服薬を管理するなど日常生活に援助を必要とする)。

C.その認知欠損はせん妄の状況でのみ起こるものではない。

D.その認知欠損は他の精神疾患によってうまく説明されない。

認知症状が認められる病気

  • アルツハイマー病
  • 血管性疾患(脳梗塞、脳出血など)
  • レビー小体病
  • 前頭側頭葉変性症
  • パーキンソン病
  • ハンチントン病
  • 外傷性脳損傷
  • プリオン病
  • HIV感染
  • 物質、医薬品の使用

他の医学的疾患による認知症(正常圧水頭症、多発性硬化症、甲状腺機能低下症、大脳皮質基底核変性症、進行性核上性麻痺、重度の貧血、心疾患、肺疾患など)

認知症の治療

認知症状を来している原因となっている病気ごとに治療法が異なります。アルツハイマー病を含む9割の認知症は完治させる治療法がありません。転倒しやすい認知症でしたら家の廊下に手すりをつけたり、段差をなくしてバリアフリーにしたり、本人が過ごしやすいように改築する。嚥下障害が出やすい認知症でしたら、みそ汁などの誤嚥しやすい食べ物にはとろみをつけるなど。また、着替え・入浴・排泄・食事摂取などの日常生活動作が自力ではできなくなって、他者からの援助が必要になったけど、家族だけでは介護が難しいという場合は介護保険を申請して、ケアマネージャーにケアプランを作成してもらいデイサービス、ショートステイなど本人、家族の負担が減るような介護サービスを利用していくことが大切になってきます。1割の認知症は改善するものがあり、硬膜外血腫、硬膜下血腫でしたら血腫の吸引・除去によって認知症状が軽快、改善します。正常圧水頭症でしたら頭蓋内に増えすぎてしまった脳脊髄液を逃がして減少させるシャント術を行う治療法があります。改善するタイプの認知症を見逃さないために、認知機能検査の他にも臨床症状(初期なのに歩行障害、手足が勝手に動くなどの不随意運動はないか、尿失禁はないかなど)の確認とCT,MRIの頭部画像検査は大切です。