アルツハイマー型認知症の総まとめ

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アルツハイマー型認知症

認知症の各論に入っていきますが最もメジャーな認知症のアルツハイマー型認知症から総まとめをやっていきましょう。診断、治療方法、予防方法、認知症のかたへの対応方法をこの記事一本でまとめたいところですが全てを書いていくと1万文字以上になってしまいますので少しだけ割愛させてください。

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概ねの認知症は精神科が担当していてアルツハイマー型認知症やレビー正体型認知症はなどは精神科が専門で診療することが多く、正常圧水頭症が疑われれば脳神経外科を紹介、進行性核上性麻痺、皮質基底核変性症などの神経変性疾患が疑われる場合は神経内科に紹介することになります。

アルツハイマー型認知症の病態

Aβ(アミロイドベータ)仮説

アルツハイマー型認知症においてAβ(アミロイドベータ)仮説が過去より有力視されています。簡単に言うとAβとは脳内のゴミです。このAβ(アミロイドベータ)はなんと40代より蓄積しはじめ、老人斑を形成しタウ蛋白の異常リン酸化から神経原繊維変化を生じ神経細胞死に至ります。この神経細胞死が多くなることで70歳~80歳よりアルツハイマー型認知症になる人が多くなってきます。40歳~60歳までの発症・若年性アルツハイマーの診断となった人は私の臨床経験上では3人程度です。

平均寿命の歴史的推移(日本と主要国)

江戸時代において平均寿命が30代だったのは子供のうちに死んでしまうことが多かったためです。
第2次世界大戦後の1950年代の平均寿命は61歳であったためアルツハイマー型認知症になった人は少なかったと思われます。
現在では90歳前後まで生きることが当たり前のようになってきており、80代から発症率が高くなってくるアルツハイマー型認知症患者数は昔に比べて確実に多いはずです。80代では4人に1人、90代では2人に1人がアルツハイマー型認知症を発症する割合です。

アルツハイマー型認知症の予防

原因となる脳内のゴミであるAβ(アミロイドベータ)やタウ蛋白をため込まないことが大切です。私が大学生のときはアルツハイマーの予防には魚のEPAが良いんじゃないかというくらいの情報しかありませんでしたが、研究が進んできて予防となる生活習慣がいろいろと分かってきました。Aβが溜まるリスクファクターとしては下記で挙げた他にも加齢やその他いろいろなものが関与しています。

良質な睡眠

睡眠中の脳内ではアルツハイマー病の原因のひとつとされるAβなどのゴミが洗い流されるかのように除去されていることは有名な事実です。そのため良質な睡眠をしっかりととることがアルツハイマー型認知症の予防になります。睡眠時間は少なくとも6時間、理想は7時間です。タレントの武井壮さんのような3時間睡眠でも元気いっぱいなショートスリーパーはAβが溜まらないのかは知りません。

オレの睡眠時間は1日45分だという情報はちと違う。。医師によるとオレは45分の睡眠で一般人の7時間睡眠と同程度の長さレム睡眠が取れている。。だから45分でも充分休息が取れる。。それを1日3回は取るから、1日21時間睡眠してる計算。。短い睡眠時間で猛烈に回復する男、それが武井壮。。

引用元:武井壮さんのツイッターより

予防効果のある食べ物

インド人にアルツハイマー型認知症を発症する人が少ないことに着目されカレーに含まれるウコンに予防効果があることが分かり、テレビでも紹介されることが増えてきました。65歳以上においてアルツハイマー型認知症の発症頻度が、カレーをたくさん食べるインド人は米国人に比べて約1/3という報告もあります。

ビタミンCとビタミンEが脳内の活性酸素を不活化するということで緑黄色野菜も効果あることが分かっています。

また2015年にラッシュ大学医療センター(アメリカ・シカゴ)の研究でアルツハイマー病を予防する食事法、通称・マインド食というものが発表されました。積極的に取るといい食材を10項目、なるべく控えた方がいい食材を5項目に分けたもので目安となる頻度も合わせて紹介されています。

おすすめの食材

避けたい食材

画像引用元:なかまある

避けたい食材を全く食べずにストレスがたまり食べたい欲求が爆発するのは不健康ですから、避けたい食材は食べ過ぎないように心がけてバランス良く食べましょう。ストレスは免疫力も低下させるし万病のもとです。

習慣的な有酸素運動

2019年1月に国際学術誌の『Nature Medicine』に公開された、米コロンビア大学やリオデジャネイロ連邦大学などの研究では、イリシンがヒトの海馬に存在しており、アルツハイマー病患者の脳ではイリシンの濃度が低下しているとわかりました。マウスを用いた実験では、イリシンが脳のシナプスを保護し、記憶力を守ることが明らかになりました。

イリシンというホルモンは初耳ですがマラソンのランナーズハイとなる脳内麻薬エンドルフィンのように、有酸素運動によってイリシンという脳内ホルモンが放出されるようです。毎日でなくとも3回/週でも良いので30分以上の散歩、水泳、ゴルフ、テニスなどのスポーツの有酸素運動によってイリシンという脳内ホルモンが脳内のゴミの掃除に効果があるのではと考えられています。

運動が認知機能に対して良好な影響を及ぼすメカニズムは複雑である。有酸素運動の実施とアルツハイマー病発症予防との関連は、縦断研究により多くの知見が報告されている。たとえば、認知機能に問題のない4,615名の高齢者を5年間追跡調査した研究では、ウォーキングよりも高強度の運動を週3回以上行っていた高齢者は、運動習慣のない高齢者より認知症の発症リスクが低かった。また、認知機能障害のない1,740名の高齢者を平均6.2年間追跡調査した研究では、調査期間中に158名が認知症を発症し、これらの高齢者に共通した特徴が分析された。その結果、週3回以上の運動習慣を持っていた高齢者は、3回未満しか運動していなかった高齢者に対して、認知症になる危険がハザード比で0.62(95%信頼区間0.44-0.86)に減少した。

引用元:引用元:国立長寿医療研究センター 老年学・社会科学研究センター 予防老年学研究部 部長 島田 裕之先生

診断・治療方法

アルツハイマー型認知症の診断に必ずしも画像検査が必要という訳ではありませんが、脳を圧迫するような囊胞や腫瘍、出血、梗塞など器質的な原因による認知症を否定するという意味で画像検査が必要です。本人・家族が日常生活においてもの忘れを初期症状の主訴として受診されますが、加齢に伴う正常な物忘れなのかアルツハイマー型認知症による物忘れなのかは「生活においてどういったことがあったのか」具体的に詳しく聴取して私たちが判断します。

赤い矢印の部分は海馬という新しい情報を脳内に短時間だけインプットする場所です。アルツハイマー型認知症になると初期の段階から通常よりも海馬の萎縮が目立ってきます。写真くらいの画像になるには発症後少なくとも5年、もしかしたら10年経過しているかもしれません。本当に初期段階だと頭部CT・頭部MRIでは年相応の萎縮のみでなんとも言えず、アルツハイマー型認知症の診断に「画像検査で海馬の萎縮を認めること」という診断基準はありません。脳血流シンチで側頭葉、海馬の血流が悪いなどの傾向はありますが、こちらもアルツハイマー型認知症の診断基準には含まれていません。

やはり重要なことは日常生活のエピソードを詳しく聴取しそれが加齢に伴うもの忘れなのか、アルツハイマー型認知症に特徴的な近時記憶障害のエピソードなのか判断することです。ちなみに長期記憶は扁桃体に保存されていますので、アルツハイマー型認知症になっても昔の記憶は保たれています。

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治療薬 ドネペジル

アルツハイマー型認知症治療薬として初めて国内において保険適応となった薬がドネペジルでした。それ以降は薬の選択肢が増えてきましたがいずれも認知症の進行を遅らせるためのものであって、アルツハイマー型認知症の進行をSTOPさせる治療薬はまだありません。認知機能を少し改善することによって自宅での日常生活動作を維持させ、施設に入るまで自宅での生活期間を延長できる薬と認識してください。

アリセプト(ドネペジル)の作用機序

アルツハイマー型認知症では、脳内コリン作動性神経系の顕著な障害が認められています。
ドネペジル塩酸塩(アリセプト)は、アセチルコリン(ACh)の加水分解酵素であるアセチルコリンエステラーゼ(AChE)を可逆的に阻害することにより、AChの分解を抑制し、作用部位(脳内)でのACh濃度を高め、コリン作動性神経の神経伝達を促進します。

アリセプトによる治療を早期に開始することでアルツハイマー型認知症患者の認知機能や独立性をより長く持続させることができます。また、途中でアリセプトによる治療を中断した場合は、無治療の場合まで認知機能やADL等が低下してしまいます。

引用元:アリセプト販売会社 エーザイ

 

 

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