認知症の定義とは何か?認知症の総論

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認知症

私は聖マリアンナ医科大学を卒業して研修医も同院、そのままマリアンナの神経精神科に入局し認知症研究班に所属していました。医科大学では大学付属病院での臨床、学生・研修医などの後輩を育成する教育、医学を発展させるための研究の大きな3本柱に従事することになります。その研究の部門において認知症研究班に在籍して、研究、実際に臨床として経験した内容を分かりやすい内容で一般向けにご紹介していきます。

認知症の定義

認知症とは一度発達した知能が後天的に低下し日常生活に支障をきたした状態です。

20代以降は脳細胞が死滅する一方なので加齢によって認知機能は低下してきます。しかし日常生活動作に支障が出てこなければ認知症ではなく、加齢に伴う認知機能低下という診断になります。認知症を発症すると正常老化による認知機能低下のスピードが早くなり、日常生活動作の支障ラインを割り込んだ段階で認知症と診断します。

  • 物や人の名前が出てこなくなった。
  • 昔よりも物忘れが多くて心配している。

当院では物忘れ外来を看板にかかげておりますが、物忘れ=認知症ではありません。加齢によって上記のエピソードが出てくることは当たり前の話なので心配する必要はありません。少し余談になりますが、上記の症状のために「認知症なのか心配になって受診しました」とお一人で外来に来られる方は認知症であったことは非常に少ないです。「私は困っていないのに子供(配偶者)に連れて来られたのよ。」と自覚症状がない人ほど認知症のことが多いです。

日常生活動作の支障ライン

ここでいう日常生活動作の支障ラインって何?っていうお話になりますが、日常生活においての最低限の活動を一人で出来ていたことが出来なくなったことを言います。

  • テレビのリモコンが使えなくなった。
  • 電子レンジを使えなくなった。
  • ATMでお金をおろすことができなくなった。
  • 清潔、不潔の概念が消失して自分からは着替えや入浴をしなくなった。
  • スーパーで欲しいものはカゴに入れるけど、お金を支払う行為が分からずお店を出て行ってしまうため警察に通報される。スーパーや警察に本人の身元引き受け人として呼ばれるようになった。
  • 買い物はできるけど豆腐など普段は冷凍庫に入れないものを、何でも冷凍庫に入れる。
  • 数分前に話した内容を忘れてしまい同じ質問をしてくる。同様の理由で1日に何回も電話が来る。

実際の臨床で頻繁に認められるエピソードですが、このような症状によって自力での生活に支障が出るために介助が必要になってきます。

認知症の原因疾患

この記事では認知症の総論なので各認知症の特徴(各論)などは別の機会でご紹介させていただければと思います。

認知症=もの忘れというイメージが世間に浸透していますが、これは認知症のなかでも初期症状が物忘れであるアルツハイマー型認知症の割合が大半を占めているためです。認知症の種類によって初期症状は異なり、認知症の種類の特定のために初期症状は極めて重要です。認知機能の症状よりも先に運動能力の障害が初期症状として現れる認知症もありますので、診察室に入ってくるときに歩行、立位の姿勢、歩幅などもチェックしています。

認知症の原因疾患の3.9%のなかには正常圧水頭症、脳腫瘍、慢性硬膜下血腫、ビタミンB1欠乏症、甲状腺機能低下症、進行性核上性麻痺、脊髄小脳変性症、皮質基底核変性症などが含まれます。臨床症状と経過から正常圧水頭症もしくは進行性核上性麻痺、皮質基底核変性症などの神経変性疾患が疑われる場合はより専門性の高い神経内科に紹介受診して頂いております。

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認知症の経過

アルツハイマー型認知症、血管性認知症、レビー小体型認知症で認知症全体の90%を占めてしまいますが、これらの3大認知症は進行性のもので初期症状こそ異なるものの最終的には寝たきりの状態になります。運動量が減り廃用性に下肢筋力が低下し終日車イス上の生活になったり、注意力低下で転倒しやすく大腿骨骨折をきっかけに車イス生活になります。認知症の診断から5~10年は食事を用意してあげればスプーンで自力摂取してくれたものの、どこかの段階で介護者が口に入れてあげないと食事摂取ができなくなります。口に入ったものは脳の原始的な部分のおかげで飲み込んでくれます。小さい子と同じで目についたもの、ティッシュなどを口に入れてしまう異食行動が出る場合もありますので、手の届く範囲に小さいものは置かないように気をつけないといけません。

認知症自体で死ぬことはない

認知症自体が原因で死ぬことはありませんが介護者が食事を口に入れてあげても飲み込まず、口のなかにため込んだり吐き出してしまうようになると厳しいです。そうなってくると飢餓状態や脱水が死因となります。また食事摂取を自力でできていても途中経過で嚥下機能が低下し誤嚥性肺炎になってしまったり、もしくは誰もがオムツ着用になりますので尿路感染のリスクが上がり、腎盂腎炎→菌血症・敗血症→死去というパターンもあります。

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